先般より当サイトでは、コロナ対策に関するガイドラインとして「米国旅行協会策定によるコロナ感染防止ガイドライン」や「米国ホテル&ロッジ協会「安全な滞在」― AHLA Stay Safe」などをご紹介してきました。また、日本においても業界団体が共同で「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)」を作成、公表しました。※リンクは日本旅館協会の該当ページです。
2020年5月現在、営業を継続している日本の旅館はどの様なコロナ感染防止対策を講じているのでしょうか。今回は、OTA(インターネット宿泊予約サイト)で販売されているプランから読み取れる主だった特徴を挙げてみたいと思います。
①お客様同士の密接を避ける対策を実施
「米国旅行協会策定によるコロナ感染防止ガイドライン」で言うところの「感染にバリアを作る」のいくつかが該当する対応です。
「お部屋でのチェックイン手続き」「朝夕部屋食対応または個室食事会場の確約」「露天風呂付客室のみ販売(大浴場クローズ)」などの対策表記が見られます。施設構造(そもそも個室食事会場が無い等)やオペレーション上の課題(部屋食提供ができない等)で対応ができないケースもありますが、各館知恵を絞ってできる限り密接を避ける工夫を講じているようです。レストラン等であってもお客様同士の間隔を空けて案内、間仕切り等の設置、時間を分けてのご案内等を行っているケースも見られます。
「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)」には、様々なエリア、場面における細かな対応策が例示されています(食事会場での横並び着席推奨、大浴場の入場人数制限なども)。これから対策を検討される場合には参考にされると良いと思います。
②消毒用アルコールは設置場所が肝心
「米国旅行協会策定によるコロナ感染防止ガイドライン」の中にも衛生管理の強化として「施設全体の公共エリアに手指消毒剤を設置」と記載があります。ただ、「施設全体の公共エリア…具体的にどこに設置すべき?」ということが気になります。玄関先の消毒用アルコール設置は珍しくないですが、その他の設置場所については各館対応がバラバラの様です。
利用者としては、エレベータ前、食事会場入口(または各卓ごと)、大浴場入口など 共有スペース付近に「必ず」設置されているという状況が安心です。大浴場入口については「風呂に入って体を洗うのに必要か?」という声もあるようですが、体を洗って大浴場を出るまでにドアノブや手すりなど何箇所も触ることになるため、やはり設置すべきだと考えます。
理想は一人に一つ小型・携帯用の消毒用アルコールを…なのですが、容器が品薄で手に入りにくいというのが現状のようです。
③スタッフの対応徹底を明記することも重要
「米国旅行協会策定によるコロナ感染防止ガイドライン」でも従業員の健康チェックについて記載があります。
「マスクや手袋の装着」「各所清掃時の換気・消毒」「消毒用アルコールを使った拭き上げの徹底」「スタッフの体温・体調チェック」等、スタッフの対策について明記することも重要です。
「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)」では、従業員等の休憩スペースなども感染リスクが比較的高い場所として対策例が記載されています。対策は、対お客様だけでなく、スタッフ同士においても考える必要があるということです。
④コロナ対策内容を当面の営業方針として明記している宿は意外と少ない?
これはOTAサイトの構成に依るものが大きいとも考えられるのですが、宿を検索してすぐに「この様な対策を徹底しつつ営業しています」という意思表示が見える状況では無いと感じます(よくよく見てみると、宿のブログページやプランの詳細ページに対策内容が書かれていることがあるのですが…)。
一部「コロナ対策プラン」という名称のプランを作り前面に掲載している宿もありますが、この場合通常販売している基本プラン等は表示されない様にする必要があるように思います(コロナ対策はプランによって行ったり行わなかったりするものでは無いはずなので違和感を覚えます)。
既存プラン名称全てに【コロナ対策徹底中】等と付けるか、宿名すぐ下に表示される施設紹介の一文中で「当館のコロナ対策内容について宿ブログに記載しております」等の文言を記載するのが良いのではないかと思います。自社ホームページにおいても、トップページのわかりやすい位置に掲載すべき情報だと考えます。
先日当サイトにて「アフターコロナの市場想定&営業戦略」を公開しています。この中で、段階的自粛解除期における宿泊事業者の営業戦略として「衛生管理の徹底が集客のポイント」と記載しております。団体客やインバウンドの回復がまだ先だと考えた時、最初に動くネット個人客を各宿で奪い合う構図になることが予想されます。この時「対策の徹底」が利用者に伝わることは集客を大きく左右する要素であると考えます。
⑤マイカーやレンタカーを使った入込を想定したプランも多い
コロナ対策それ自体は(利用者にとっては当然行ってほしいものなので)特別なプランとして売りにくいものです。一方で、プラン名に「コロナ」は付けていなくても目を引くプランも存在します。1つは他者との密接が避けられることが感じ取れるプラン。部屋食、朝夕食個室、客室露天、貸切風呂、おこもり…といったキーワードがプラン名に含まれています。もう1つはマイカーやレンタカーでの来館時にメリットがあるように感じ取れるプラン。駐車場無料、ガソリンチケット付き…といったキーワードがプラン名に含まれています。
5/14に北海道、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、京都、兵庫を除く39県について緊急事態宣言の解除が発せられました。残り8都道府県についても今後段階的な解除が予想され、正に「段階的な自粛解除期」に入ったと考えることができます。営業再開へ向けて衛生管理の徹底のための社内体制を「今」作り上げることが重要なことだと考えます。