最近、新聞で、「新型コロナウイルスの影響を受ける企業に劣後ローンなど資本支援策を打ち出す」「官民ファンドを活用」などの記事を目にします。
「劣後ローン」「官民ファンド」とはどういう意味なのでしょうか?
1. 劣後ローン
通常企業の皆さまが金融機関から借入をする場合、短期借入金と長期借入金を使い分けていると思います。
短期借入金
仕入などの運転資金や一時的な赤字補てんを資金使途とする借入で、商品を販売して資金化した時点、あるいは一時的な赤字状態を抜けた時点で弁済となりますが、借り換えにより事実上の運転資金枠となっていることも多いと思います。
長期借入金
大型修繕資金やリニューアルなどの設備投資資金を、投資により見込める収益により長期にわたり弁済をします。毎年一定額を約定弁済します。
劣後ローン
- 借入の一種です。一般的な金融機関からの借入よりも弁済の最終期限が長く、弁済の順位が低い借入です。一般的な金融機関からみると借入金と資本の中間にあり、資本により近い性格にみえることから「資本性劣後ローン」とよばれることもあります。
- 「劣後」に対して、通常使われている借入金を弁済の優先順位が高いという意味で「シニアローン」と呼ぶこともあります。万一収益が悪化し、借入金の弁済が難しくなった場合、シニアローンを優先して弁済することになります。
- 劣後ローンは、弁済順位が低いので、「リスクマネー」と呼ばれることもあり、金利は通常の借入より高くなります。
- 劣後ローンで資金調達すると、超長期で弁済するので毎年の弁済負担はおさえることができますが、通常の借入金に加えてその分更に借入金が重くなりますので、検討に際しては、コロナ禍の影響を踏まえた今後の事業戦略をしっかり練り上げ、中長期の事業計画に基づく弁済が可能か、の視点が重要です。
2. 劣後ローンの検討に際して
- まずは短期的な資金繰りの確保:コロナ禍で営業自粛や休業などによる赤字資金の手当てを政府系金融機関や保証協会などを活用し、当面に資金を確保することは喫緊の対応です。
- 営業再開後、徐々に宿泊、宴会需要等が回復し、中期的な事業の見通しがつきだしてくると、ストップしていた大型の修繕や設備投資の資金調達が必要となります。一方で、コロナ禍で損失の計上により資本が縮小してしまい、新規の借入がしづらくなる場合など、劣後ローンによる資金調達は選択肢の一つにはなります。
- 劣後ローンは中長期の事業収支見通しに基づく調達となり、しっかりとした事業計画の審査に対する準備が必要となります。審査基準は一般的にはシニアローンよりも厳しい目線となるので、事業戦略や事業の見通しの考え方をしっかり練っておくことが重要です。
- 劣後ローンは、日本政策金融公庫で以前より制度融資がありますが、新聞報道によりますと、コロナ禍の影響への対応策として政府が地域経済活性化推進機構(REVIC)や中小企業整備基盤機構なども活用した官民ファンドでの対応を検討しているようです。
官民ファンドとは、国の施策に基づき政府系機関と民間で共同で出資するファンドです。官民ファンドなどの動きにつきましては、今後もフォローをしてまいります。