自粛解除に伴い、営業再開されるホテル・旅館・レストランが一気に増えました。再開に際し、新型コロナウイルスの拡散・感染を防止のガイドラインを各社・各業界団体が設けています。しかし、ガイドラインはあれど、ガイドラインに基づく現場オペレーションの実際はどうすればよいのかが分からずお困りの事業主も多いと伺いました。中でも、「下膳」オペレーションの参考事例が国内外になかなか見当たらないとの声を耳にしましたので、僭越ながら、筆者が衛生管理指導した経験から、その具体的内容(下膳マニュアル)をここに共有されて頂きます。少しでもお役に立てれば幸いです。ご参考下さい。
下膳の基本
- ビニール手袋を着用し、下膳の度に手指のアルコール消毒を実施する。
- 素手で下膳を行なう場合も、下膳の度に手指のアルコール消毒を実施する。
- トレー/番重/下膳用バスケット等を使用する場合は、下膳の度に表裏ともアルコール消毒を実施する。特に裏面が重要。テーブルにトレーを置いて作業をするケースが多く、ウイルスをあちこちに広げてしまう危険があるため。
- 下膳作業を行う前に、下膳物類の置き場所(以下「下膳場」)に十分な空きスペースがあるかを確認してから、ホールへ向かうこと。
客席清掃の基本
■おしぼりについて
- おしぼりは、お客様の口や手に直接触れているため、慎重に取扱うこと。従業員は直接手で触れないこと。
- お客様が使用したおしぼりでテーブルを拭くことは禁止。
■テーブル清掃について
- お客様の退店後、テーブル/椅子はアルコール消毒を実施する。
- テーブルや椅子の裏側も、手が触れる可能性がある箇所はアルコール消毒を実施する。
下膳後(バックヤード)
■下膳場所について
- 下膳作業を行う前に、下膳場に十分な空きスペースがあるかを確認する。(再掲)
- 下膳した食器類は、可能な限りすぐに食洗機へ入れる。
- おしぼりや割り箸などは、すぐに規定の場所へ入れる(捨てる)。
- 食洗機のフタは開けっ放しにしない。
- 下膳場は、可能な限り1箇所に集約すること。食器洗浄が間に合わず本来の下膳場ではない場所に下膳物類を溜めておくことがある場合は、下膳物類を置いておく場所の優先順位を決めておき、あちこちに置かないこと。その際でも、割り箸、おしぼり、残飯は先に規定の処理をすること。つまり、食器類以外は先に処理しておくこと。
- 下膳場所は、食器類がなくなる度にアルコール消毒を実施し拭き清掃すること。
(食器の裏側からのウイルス拡散を防止)
※完成した料理を置く場所と下膳場を可能な限り遠ざける。
■残飯について
- 残飯にはウイルス付着の可能性が極めて高いため、素手では絶対に触らない。
- 下膳の際、客席にて残飯を一つの食器上に集める様なオペレーションは禁止(ウイルス飛散防止のため)。下膳オペレーションは非効率になるが、厳守すること。
- 下膳したら、すぐに残飯を規定のゴミ箱に捨てること。
- 残飯を捨てる度に、アルコールスプレーを残飯(ゴミ箱内)に噴霧すること。
- ゴミ箱はフタ付きの物を使用し、常時フタを閉めウイルスの飛散防止に努める。
■食器類の手洗い、及び、食器洗い道具について
- スポンジやタワシ等の食器洗い道具を介してウイルスが広がらないよう、基本的には食洗機を使用すること。
- 手洗いが必要な場合は、洗い終えた食器類を80度以上の熱湯にくぐらせること。または、食洗機に入れること。
- 熱湯処理や食洗機使用が出来ない場合は、毎回アルコール消毒を実施すること。
- 食器洗い道具は、複数セット用意し、定期的に80度以上の熱湯にくぐらせること。
その他
■UVランプについて
- UV-C波(短波長紫外線)の照射が新型コロナウイルスの不活性化に極めて有効であるとの報道がある(記事)。下膳場所やゴミ箱に設置出来ないか検討。
■カトラリーについて
- 各テーブルへのカトラリー設置を禁止。不特定多数のお客様が素手で触れ、感染拡大を招くため。カトラリーは、全て来店時または料理提供時に必要数をお渡しすること。
尚、最終的には、現場オペレーションや店舗レイアウト(特に厨房レイアウト)を勘案して、衛生管理ルール及びオペレーションルールを決定する必要が御座います。
また、現実的には現場スタッフにルールを徹底して頂くのはとても難しく、相当な工夫が必要です。特にアルバイトが多い現場ですと尚更です(細かいルールが多い為、覚えきれない)。その為、下膳場所/ゴミ箱/洗い場・・・などあちこちにラミネート加工した張り紙をし、ルールを提示する必要があります。外国人スタッフがいる場合は、各言語でも多言語表示しています。
以上、参考になりましたでしょう。コロナウィルス感染/防止に配慮しながら、従業員もお客様も安全に営業されることを願っております。